「いっぴんいち」が大切なわけ。

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西調布駅前で開かれていた「いっぴんいち」にお邪魔してきた。

 

賑わいが失われてしまった商店街にもう一度賑わいを取り戻すために、商店街の道路に屋台やテーブルを持ち出して、各自がこだわりの“いっぴん”を持ち寄って、もう一つ商店街を作る「いっぴんいち」。アートジュエリーや似顔絵イラストのワークショップがあったり、コーヒースタンドやかわいい動物の形をしたパン、手作りのスタイの販売などそれぞれの“いっぴん”が屋台で販売されていたり、とても賑わっている。

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商店街の一番奥には老舗の和菓子屋さん。

 

「和菓子屋さんがあるなら、お茶を出す屋台があればいいなって思ったんですよ。」と語るのは、「いっぴんいち」の仕掛け人のひとりであるYADOKARI小屋部部長の唐品さん。唐品さんは、リゾート.netというリゾートに特化した不動産を紹介するサイトを運営する側ら、「ねぶくろシネマ」や「◯◯を面白がる会」という会を開催したり、YADOKARI小屋部として屋台を使ったイベントを数多く手がけている。

 

「物件を紹介するときに商店街にきて、これはまずいなっておもったんですよ。駅から1分とかからないのに空き店舗だらけで。いまは、2つの建物をシェアアトリエとそこで活動しているブルースタジオのスタッフのための住宅として活用してて、そういう動きと今回のイベントをきっかけにお店や人が戻ってきたらいいなって思ってるんですよね。」(唐品さん)

 

もともとはアトリエ兼住宅として商店街にある家屋を紹介したことが始まりとのこと。お店だった1F部分をシェアアトリエにして、その上に住む。この形は日本中の駅前商店街にごく当たり前にあった居住形態。それが、郊外の大きなショッピングセンターの出現やより広い家やお店を求めるなかで、人々も、駐車場のない駅前商店街より、郊外の大きな駐車場があり、大量のモノを一度に購入できる便利なショッピングセンターに流れていった。こうして日本中の駅前にシャッター商店街ができたのである。

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一方でここ数年人々の価値観も変わりつつある。大型の量販店やチェーン店でなく、地元の商店や、個人経営の物販及び衣料品店が注目を浴びるようになってきている。対象となる商品も、添加物や保存料が入ったものでなく、健康志向になり、産地や生産者がはっきりとしているものが好まれつつある。

 

こうしたムーブメントは、ファッションや食などの分野に広く浸透しつつ有り、一般的には文化における第三の波、すなわち「サード・ウェーブ」として語られている。これまでは、よりたくさんの物を手にいれることで豊かさを感じる時代(「セカンド・ウェーブ」)であったが、今まで当たり前のように手にし、口にしてきた物、衣食住を見直そうという動きで、様々な社会問題に起因し、人々がエコやオーガニックなどテーマを大切に物を選ぶ時代と言える。

 

空き家が増え続ける原因には様々な要素がある一方で、解決できる方法も多様だ。こうした価値観のシフトの中で、駅前の“店舗兼すまい”というあり方はとても相性がよく、個人商店が賑わいを生み出す流れも少しづつ増えてきている。

 

地方の駅前商店街を再生させるきっかけとして、「いっぴんいち」が果たす役割は大きい。

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