このゲストハウスの素晴らしさとは、写真やテキストでは語れないのである。
もちろん、本間くんがこれまでに仕掛けた一連のゲストハウスTOCO、NUI共に素敵であるが、LENにはそのいいところがぎゅっと、さらに凝縮されているように感じる。
月曜日だというのに、昼夜と賑わいがある1Fカフェバーは日本にいることを忘れる。割と大きめの音量で流れる音楽、人の話し声、、、当然、知っている人は誰一人いないのに、知人についれて行かれるそこそこ知っている人たちのパーティーより断然居心地がいい。
LENに着いたのは日曜日の17時過ぎだったが、1Fカフェバーは人で溢れていた。旅行者らしき人が多いのはもちろんだが、どちらかというとカフェにお茶をしに来たような二人組みや、京都観光の延長でカフェだけ寄りましたと言わんばかりのガイドブック持参の親子など、様々だ。
今回は出張で仕事なども部屋でしなくちゃというニーズがあったため、あえてツインにしたのだが、ラウンジ以上に心地い宿泊者用のリビングもあり、これならドミトリーにしとけばよかったという感じ。
部屋はコンクリートの打ちっぱなしに、ラワンの扉、そして、NUIからの一連のデザインを踏襲したメタルやレザー、ラフなウッドのインテリアはワイルドすぎず、素敵だ。なにより、今や日本のデザイン規律かと思うほどいろんなところでみるポートランド風デザインでないことがいい。けっこう思いきった素材感や形だけど、全然ハードボイルドな感じもなく、むしろ新しい。各フロアにある共用のシャワー、洗面、トイレもコンパクトながら清潔でいい。
翌朝、月曜日は平日ということもあるのだろうか、日曜日ほどの賑わいはないのだが、一人旅の利用者が多い。1時間ほど宿泊者用の2Fラウンジで仕事をしている中、十数人のゲストが出入りしたが、その8割が日本人女性、ほかが、日本人男性、外国人女性、アジア系カップル。backpackkershostelというコンセプトでありながら、その属性はバックパッカーではなく、感度の高い20-30代女性なのである。
一方で、1Fカフェバーに行くと、そこは全く別世界。どちらかというとアメリカ、ヨーロッパ系のファミリー、男性グループ、熟年夫婦など、、、
総じていうと、1Fカフェバーはヨーロッパ系THE外人ワールド、2Fラウンジはアジア・ほっこり一人旅といったところか。
出張中の40代既婚男性というセグメントは僕だけであり、若干の居心地の悪さを感じながら、隅の方で仕事をしていると旅行者同士の会話が聞こえてくる。どこに行くといいとか、どこに行きたいとか、実に楽しそうである。
自分が20代、30代の時にこんなゲストハウスがもっと日本にあったらよかったのに。いや今でもいい。
僕がこうした文章を書くとどうしても施設の良さに偏りがちであり、なんだかとってもかっこいい施設で、ビジネスホテルはダサくてというふうに聞こえるかもしれないが、この施設の良さはそこにはない。ラウンジが居心地がいいのも、リビングが居心地がいいのも、そこには人がいて、人と人の出会いや関係性があるからであろう。ホテルのフロントにももちろんベルマンがいて、コンシェルジュがいて、こちらの質問に手際よくパンフレットを出してくれるのだが、その感覚とはまるで違う。
はじめに書いたように、このゲストハウスの素晴らしさとは、写真やテキストでは語れないのである。その理由は、ここにある。
改めて、ゲストハウスに限らず、日本には本当の意味で居心地のいい宿泊施設はまだまだ足りないのである。まさこのリビングの窓から見えるのはメガチェーンホテルなのだが、きっと、これからはよほどのことがない限りこういうビジネスホテルには泊まらないないのだろう。この目の前に見えるビジネスホテルでは、人の出会いも、関係性もないのである。
これまでも小さなゲストハウスはいくつかあったが、どちらかというと地方のほっこり宿という印象が強かった。一方でTOCO NUI LENと一連のゲストハウスは日本での宿泊施設のあり方を具体的に示したプロジェクトであると思う。今後もこうした宿泊施設が増えること、そして、自分もその一端をになっていきたいと強く思う。